株主投資家の取り分を「キック」せよ!~「エクイティキッカー」


株主投資家の取り分を「キック」せよ!~「エクイティキッカー」

コーポ―レートファイナンス領域でしばしば聞かれる「エスプリ」の効いた専門用語。恐らくは、渉外専門の弁護士や投資銀行家により、これまで数々のウィットの効いた業界用語が生まれてきました。今回はそんな中でも私がちょっとお気に入りの、「Equigy Kicker」をご紹介します。

■エクイティキッカーとは?
 エクイティキッカーとは、主にレバレッジド・バイアウト(LBO)取引などで用いられる金融の仕組みの一つで、債権者が将来的に企業の株式等のエクイティ(株式資本)に関連する権利を得られるオプションを指します。この仕組みは、債権者にとって追加のリターン獲得のチャンスを提供し、また、借り手にとっては融資条件をより合理的に設計できる可能性を提供します。

 

エクイティキッカーは、融資契約の一環として設定されることが多く、よくあるケースでは、債権者はある一定の条件下で、貸付金の一部または利息の代わりに、借り手の企業の株式や株式に転換可能な証券を受け取る権利を有します。この権利の行使により、融資を受けた企業が将来的に成功した場合、債権者は通常の利息収入に加え、企業の価値上昇に伴う利益(キャピタルゲイン)の一部を享受することが可能になります。

 例えば、LBOローンベンダーが、ローン金利を通常より少し低く設定し、新株予約権や転換条件付きの劣後債(キッカー)を取得します。そして、バイアウトファンドの投資先が将来売却(イグジット)を迎えたときに、このキッカーがエクイティに転換されます。これは、既存株主(バイアウトファンド)持ち分の一部希薄化をもたらし、その分の経済的価値がLBOローンベンダーに移転します。

 

エクイティ側の取り分を一部「キック(蹴りだしてやれ!)」という話
LBOによる企業買収は、ターゲット企業から生じるフリーキャッシュフローを、債権者(LBOローンベンダー)とバイアウトファンド(エクイティ投資家)が得る仕組みです。当然債権者はキャッシュフローに対する優先権を持ち、エクイティ投資家は最劣後します。

誰が名付けたかは不明だが、ファンドの人たちではなさそう。
 これを最初に「キッカー」と名付けたのが、渉外弁護士なのか、投資銀行家なのか、はたまたLBOローンのベンダーなのかは分かりません。しかし、バイアウトファンド業界のだれかが命名したものではないでしょう。ローンベンダーの資金にレバレッジをかけて買収した企業を転売し、高いリターンを得るバイアウトファンドは、言うまでもなくLBOの最終的な主役です。その主役の取り分を「ちょっと蹴っ飛ばして頂戴しますよ。」というこのネーミング。主役に対して「チクっと刺す」ようなニュアンスを感じるこうした遊び心は、ウィットが効いていて、私は嫌いではありません。


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代表取締役経歴

GMDコーポレートファイナンス(現KPMGFAS)にてM&Aアドバイザリー業務に従事。バイサイド、セルサイド双方の案件エグセキューションを経験。 その後、JAFCO 事業投資本部にてバイアウト(企業買収)投資業務に従事。 また、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)にて、通信/ITサービス企業の事業ポートフォリオ戦略立案等、情報通信/ITサービス領域におけるコーポレートファイナンス領域のプロジェクトをリード。
2013年 IGNiTE CAPITAL PARTNERS株式会社設立。代表取締役就任。

日本証券アナリスト協会検定会員
日本ファイナンス学会会員

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