中国電気自動車市場のリアル


 近年、中国の電気自動車(EV)市場が急速に拡大しているとの報道が多く見られます。しかし、これらの報道が真実を正確に反映しているのか、それとも電動化の流れを過度に評価した結果を示しているのか、データを検証することで確認することが重要です。そこで今回は、過去2年半(2021年1月から2023年5月まで)の中国の自動車販売データと、中国のEV市場についての最新の報告を分析し、電気自動車市場の実際の動向を探ってみましょう。

 冒頭のグラフは、中国における毎月の新車販売台数と電気自動車の販売台数を棒グラフで表しています。そして、毎月の新車販売台数に占める電気自動車のシェアを線グラフで表しています。データ分析の結果、電気自動車の販売台数の平均月次成長率は約8.9%、全自動車の販売台数の平均月次成長率は約3.2%で、電気自動車の全体に対するシェアの平均月次成長率は約5.3%でした。これらの数字は、電気自動車市場が全体の自動車市場よりも急速に成長していることを示しています。特に、電気自動車のシェアの成長率が伸びており、消費者の電気自動車に対する関心が増していることがわかります。

 しかし、2023年1月以降のデータを詳しく見てみると、少し異なる傾向が見られます。具体的には、電気自動車の販売台数の成長率と全体の自動車販売台数の成長率が減少し、電気自動車のシェアの成長率も同様に低下しています。これが中国市場全体の変調を示すものなのか、それとも一過性のものなのか、注目すべき変化です。

 中国の電気自動車市場がここ24~36カ月の間に、劇的に成長しているのは間違いありません。その背景には、BYDに代表されるような、民族系といわれる中国独立資本のOEMの台頭があります。しかし、2023年初頭からみられる一部の成長指標の変調の背景には、米中対立の長期化による先端半導体の供給不足、政策の影響、競争の激化など、中国電気自動車市場の根本的な変化を反映している可能性もあります。今後、中国の電気自動車市場がどのように進化するかは、今後の市場環境や政策の動向、そして各自動車メーカーの戦略によるところが大きいでしょう。そのため、中国の電気自動車市場の今後の動向を理解するためには、継続的なデータモニタリングと、市場環境や政策の変化に対する理解が必要となります。当社は、今後も中国をはじめとする自動車電動化のトレンドを分析し、定期的な情報発信をしてまいります。

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設立 2013年3月
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代表取締役経歴

GMDコーポレートファイナンス(現KPMGFAS)にてM&Aアドバイザリー業務に従事。バイサイド、セルサイド双方の案件エグセキューションを経験。 その後、JAFCO 事業投資本部にてバイアウト(企業買収)投資業務に従事。 また、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)にて、通信/ITサービス企業の事業ポートフォリオ戦略立案等、情報通信/ITサービス領域におけるコーポレートファイナンス領域のプロジェクトをリード。
2013年 IGNiTE CAPITAL PARNERS株式会社設立。代表取締役就任。
日本証券アナリスト協会検定会員
日本ファイナンス学会会員

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