グロース市場への上場を果たした創業者、あるいは経営者の年齢と、上場後の成長との間にはどのような関係性があるのでしょうか、あるいはないのでしょうか。起業家や経営者の年齢と成長の関係性は、きっと多くの人が知りたいテーマでしょう。
例えば、30代の若手IT起業家と、50代、あるいは60代のマチュアな起業家が共にグロース市場上場したのち、その後も事業規模や時価総額を拡大し続けることができるのはどちらの起業家なのか、両方なのか、あるいはそこに有為な差はないのか。
弊社(イグナイトキャピタルパートナーズ)が提供するグロース銘柄分析サイト「ラピスラズリ」は、グロース市場銘柄に特化した、企業分析ツールです。今回は、生成AI「Claude Code」と共に、このラピスラズリの機能を駆使して、このテーマに迫ってみましょう。
■グロース市場に上場した時点での社長の年齢中央値は「47歳」(創業オーナー/非オーナーは区別せず)
上場企業の役員の生年月日は、有価証券報告書や新規上場時の開示書類に法定記載される公開情報です。当社が提供するグロース銘柄分析特化型情報プラットフォーム「ラピスラズリ」では、収録銘柄について上場時点の開示書類にさかのぼって代表取締役社長の生年月日を確認し、「上場時の社長の年齢」をデータベース化しました。今の社長の年齢ではなく「上場したときの社長の年齢」であることがポイントです(社長交代があった企業では両者は別人です)。一次情報で確認できた411社が、本シリーズの分析対象です。
グロース市場の社長、中央値は47歳
| 上場時の社長の年齢 | 社数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 39歳以下 | 89社 | 22% |
| 40〜49歳 | 169社 | 41% |
| 50〜59歳 | 113社 | 27% |
| 60歳以上 | 40社 | 10% |
中央値は47歳。最年少は24歳、最年長は75歳でした。ボリュームゾーンは40代で、じつに4割を占めます。20〜30代の社長は約2割にとどまり、逆に50歳以上が4割近くいます。「若者が興すスタートアップ」というイメージと、グロース市場の実像の間には、思ったよりも距離があります。
では、起業した時点の年齢はどうか。創業社長(オーナー社長※株式を5%以上保有している社長と定義)298社について、会社設立時の年齢を計算すると、中央値は33歳でした。33歳前後で起業し、10年強かけて上場に至る——これがグロース市場の最も典型的なコースということになります。確かに上場時点での年齢は47歳が中央値でしたが、創業社長の起業年齢中央値が33歳という事実は、やはり30代は、起業家になるための「旬の時期」と言えるかもしれません。
「テック系の社長は若い」は、データで支持されない
次に、業種別に見てみましょう。仮説としては「IT・テック系は若い社長が多く、それ以外の業種は年配が多い」という構図が思い浮かびます。結果はこうでした。
| 業種 | 社数 | 上場時年齢の中央値 | 39歳以下の比率 |
|---|---|---|---|
| 情報・通信業 | 184社 | 46歳 | 26% |
| サービス業 | 135社 | 46歳 | 24% |
| 不動産業 | 11社 | 48歳 | 18% |
| 小売業 | 15社 | 49歳 | 7% |
| 医薬品(創薬) | 18社 | 55.5歳 | 0% |
※社数8社以上の業種のみ表示。業種は東証33業種分類。
意外なことに、情報・通信業の社長はサービス業と年齢中央値も若手比率もほぼ同じでした(情報通信:46歳・26% vs サービス業:46歳・24%)。「テックは若い」という通説は、少なくともグロース市場の上場社長に関しては成立していません。
その一方で、はっきり異質なのが医薬品、すなわち創薬バイオです。上場時年齢の中央値は55.5歳と全業種で最も高く、39歳以下の社長は18社中ゼロ。博士号を取り、研究者や製薬企業でのキャリアを積み、その専門性を土台に起業する——という経路を考えれば自然な結果ですが、「若さ」よりも「経験と圧倒的専門性」がカギとなるセクターも、明確に存在するといえます。
起業に「遅すぎる」は、データ上存在しない
もうひとつ、この分布データから言える大事なことがあります。創業社長298社について、起業した年齢と、その後の売上成長率の間には、ほとんど関係がありませんでした。
| 起業時の年齢 | 社数 | 売上成長率(年率・中央値) |
|---|---|---|
| 29歳以下で起業 | 103社 | +18.0% |
| 30代で起業 | 126社 | +16.4% |
| 40代で起業 | 51社 | +18.7% |
| 50歳以上で起業 | 18社 | +10.8% |
20代で起業した会社と40代で起業した会社の成長率は、ほぼ同水準——むしろわずかに40代起業のほうが高いくらいです(50歳以上はやや低いものの、対象が18社と少ないため、断定は控えます)。少なくとも上場まで到達した企業を見る限り、「起業に遅すぎることはない」をデータは支持しています。
ところが、です。「起業した年齢」は成長と無関係なのに、「上場した時点での社長の年齢」をその後の成長と突き合わせると、まったく違う景色が見えてきます。次回は、上場時点での創業者の年齢とその後の成長の関係性について分析してみたいと思います。
出典: IPO・グロース市場分析サービス「ラピスラズリ」収録データ(2026年7月時点)。上場時の社長の年齢は、新規上場時の開示書類または上場後24ヶ月以内に提出された有価証券報告書の「役員の状況」に記載の生年月日から算出(一次情報で確認できた411社が対象。2016年以前上場の一部は開示書類の保存期間の制約で対象外)。起業時年齢は創業社長について会社設立年と生年から算出。売上成長率は当社収録の最古通期実績から直近通期実績までの年率換算。数値は各社開示資料等に基づきますが正確性を保証するものではありません。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。